友を訪ねて「65年続く会社の心」

株式会社カメダデンキ 代表取締役社長 山下宣世(のりよ)
配線資材などを扱う株式会社カメダデンキは、創業65年。社長の重責を担い2年半になる山下さんに伺います。今の経営環境はいかがですか?(編集部)
どの会社でもそうでしょうが、人手不足には悩んでいます。前々から新規に営業所を出したいと思っている場所はあるのですが、営業マンになるには、入って3年で何とかやっと駆け出し、ですからね。
でもこの間、入社2年未満の社員研修をしたら17人いたんです。全社で80人の会社にです。もちろん、みんな私が面接をしたのですが、そろってみると改めて、自分でも驚きました。いつの間にこんなに、と。
扱うのは配電盤の部品や配線の資材などで、あまり一般的には知られていない物ばかりですけれど、全国に販売しています。ある意味で、社会インフラの一つ、という面はあるんですね。ビルや工場、商業施設など、どこでも絶対に配電盤は必要で、小さい部品であっても、それがないとできないわけですから。
ぶどうの木につながる
社長になるとは全く思っていませんでした。
まだ若い独身時代に何かの研修会で、将来社長になったらどうする、と問われたことがありましたけれど、そんなこと全く考えもしませんでした。
それが、前任の社長からお願いしたいと言われて、自分に適性があるとは到底思えないけれど、40年近くも勤めているのに、むげに断れない。
そのころに読んだ『生命の光』の聖書講話に、ヨハネ福音書のイエス・キリストの言葉が載っていました。
わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。もし人がわたしにつながっており、またわたしがその人とつながっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる。
ヨハネ福音書15章5節
ああ、自分はこれでやっていこう、と覚悟したんです。世の中には素晴らしい経営者はたくさんいて、素晴らしい経営の技術やノウハウもあるわけです。私なんかがそういうことを勉強してマネしたって、とてもとてもかなわない。でも私は私で、こういう聖句をもって信仰で立っていくんだと、腹が決まったんですね。
自分が何かをするというより、祈りの中でキリストご自身につながることなんだ。そうしたら自分も、そしてきっと周囲も、実を豊かに結ぶようになる。
幸いこの3年は、長い間目標にしながら到達できなかった、年商20億を突破することができています。
会社の存在意義は
もちろん、社員はみんな、頑張っていますよ。でも、優れた人材がいて優れた業績が上がっている、それだけでは必ずしもないんです。
創業者の亀田耕平さんは元々クリスチャンでしたが、事業に行き詰まっていた時、手島郁郎先生の説く福音に触れ積極的な信仰をもつようになり、物の見方が変わって、祝福の道を歩みだされた人です。
亀田さんは当時、手島先生から、「彼を雇ってくれないか」と頼まれた人をすべて「はい」と二つ返事で次々受け入れた。その中には、信仰を求めて先生のもとに来たけれど、体が弱かったり病気だったりして、ほかでは雇ってもらえない人も多かった。そういう人たちが意気に感じ、精いっぱい働くと売り上げが伸びていったという、この会社の成り立ちがあるのです。
それがあって祝福されていると、私は思っています。最近でも、耳が聞こえなかったり、幼いころから心臓の病をもっていたり、といった人たちが勤めています。人間の努力というよりも、神様のあわれみですよね。それを忘れたら、会社が存在している意味がありません。
10倍ぐらい規模の大きい同業者もある中、比較されれば小さなわが社に、なぜか「カメダデンキさんから買いたい」と、複数の会社がそろって挨拶に来られたことがありました。そのうちの数社は、それまでは取引がなく、他社から買っていた会社なんです。
お客さんのほうから買いたいと言ってくるというのは、普通は考えられない。ありがたいですよね。製品の良さを認めてくださった部分もあるとは思いますが、それだけではない気もします。


献身の誓いと今
高校生の時、幕屋の多くの仲間たちと共に神様に献身を誓った、忘れることのできない集会がありました。
でも、親元を離れ、就職し、好きな人ができて……、という中で、献身を願ったあの日の自分を見失っていた時期がありました。自分の好きな道に歩みたいと思う「心」と、人生をキリストのために生きたいと願う「魂」との葛藤(かっとう)。そういう、自分で自分を否定している分裂状況で、何に対しても意欲がわかなくなって、当時は「しらけの山下君」と呼ばれていました。
ですが、そんな私に「君の本当の願いは何なんだ。もっと熱くキリストに生きるんだ!」と迫ってくれた友人たちがいます。今思えばそれは、「愛」ですよね。
その後も、家庭ができ、仕事上でも安定してきたころに、手島先生が聖書を説き、語るお言葉に触れました。「人は思うでしょう、何もそんなに気違いのようになって、福音のために戦わんでもいいじゃないかと。しかし、そのように気が狂うようにも戦う人があればこそ、信仰は伝わっていくんです。……すべてを捨てて伝道に没頭しようとするのは、神の愛が私を狂わしめるんです!」
その時、神様に愛されてきたことを思ったら、私も神様のためならすべてを捨ててでも、という心にもう一度立ち帰る経験をしました。
献身を誓った高校生のころは皆、献身とは伝道者になることだと考えていたと思います。そういう意味では、それができているとは思いません。でもみんな伝道者になったらいいのかというと、そういうわけでもない。
私が今思っているのは、献身とは自分のためや、自分のしたいようにではなく、神様に仕える心で生きようとしている、その人の生き方それ自体。
仕えるというのはまた、仕事で出会う方や社員に対してもそうですね。私が金もうけをして、何か成り上がろうとしているわけではないですから。
主力商品のベースは、創業者の亀田さんが考えた物がほとんどです。たとえば「マルチアングル」と呼ばれるL字型の鋼材は、建築物の補助などでも広く使われていて、使う人にとってはもう、ねじ、くぎの部類。必需品です。今ではいろんな会社が造っていますが、カメダデンキが考えたから、世にある。60年以上たっても売れつづけています。
その土台の上に、LED照明や、日本発のアモルファス合金を使った床暖房や融雪ヒーターなど、新たな取り組みをしています。

架台や棚の骨組みなどに使われる鋼材。
全国のホームセンターにも卸している

発熱性と耐久性、省エネ性を併せ持つ、イスラエルのヒーター技術と日本の製造
技術によってできた次世代敷設ヒーター
そして「後に続くもののために道標(みちしるべ)となれ」という社是を掲げて、100年企業を目指しています。
最終的には、カメダデンキの創業の心は、ヨハネ福音書15章の、ぶどうの木の聖句につながるのかもしれないですね。受け入れたいろんな人たちと一緒に働いて豊かに実を結んだ、亀田耕平さんの墓碑銘になっている言葉でもあります。
本記事は、月刊誌『生命の光』876号 “Light of Life” に掲載されています。

