信仰の証し「あの感激を再び」

孫世代の若者たちに教えられたこと

佐々木千枝子

私には2歳から19歳までの、9人の孫がいます。先日その1人が、一度やってみたかったと、髪を金色に染めてきたんです。すぐに、もう飽きた、と黒髪に戻しましたが、びっくりしましたね。

孫たちを見ても、言葉遣いや格好が私たちの世代と全く異なります。時代が違うのですから当然ですが、日本はどうなっていくのかと思わないでもありません。

夫を先に天に送り、私自身も70歳を超えました。この先、人生の晩年をどのように過ごしたらいいのか、いつもそのことを思っていました。そのような時に、私に特別な機会が与えられたのです。

昨年、高校を卒業したばかりの幕屋の女子3人が、聖書の国イスラエルへ留学に行くことになりました。若い女の子だけでは心配なので、留学した経験がある私に、一緒に行ってほしいとお声がかかったのです。それで数カ月の間イスラエルのキブツ(共同村)で、3人と寝起きを共にしてきました。

ここまで年が離れていますと、世代のギャップなんてものではありません。人種が違うように感じました。でも、私は今度の留学を通して、変わる必要があるのは私のほうだと、考え方が大きく変えられました。

●遭難事件!?

若い彼女たちにとって初めての海外生活は、やはり魅力も刺激も大きいです。イスラエルに到着したらどこか浮足立ってしまい、それが生活に表れてきました。

夜遅くなってもなかなか部屋に帰ってこない。部屋の掃除や台所の使い方など、気になりだしたら止まりません。初めのころは、そのような感じでした。

また、聖書の言葉であるヘブライ語の勉強をすると、強烈な競争心がわいてくる。それも引き金となってか、共同生活のさまざまなことで意見の相違が顕著に現れて、3人の仲が険悪な雰囲気になっていったんですね。

そういう姿を見ていたら、やっぱり私は口を挟みたくなります。でも、年配者がすぐに「それは違うよ」と言ってしまうのはいけない。私は彼女たち自身が気づくことを、祈りつつ待とうと思ったんです。

そんな時に事件が起こりました。早朝、皆で山へ出かけた時に、2人が道に迷ってしまったのです。現地の方々も捜してくださったのですが、見つかりません。

私は「神様、2人を無事に帰してください」と必死に祈りました。心配しながら待ちつづけて数時間、ようやく自力で帰ってきましたが、2人の腕と足は擦り傷でいっぱいです。怖かったろうな、心細かったろうなと思ったら、私は叱るよりも「無事でよかったね」と抱きしめました。すると、ポロポロ泣くんですよ。

まだぎくしゃくする時もありましたが、このことが起こってから3人の生活態度は少しずつ変わりました。

●私は恥ずかしい

また、私にとっても心の転機となる出来事がありました。それは、十字架にかかられたイエス・キリストが復活されたといわれる場所へ、皆で行った時のことです。私は、この年になってもう一度聖地イスラエルに来させてくださった感謝を思い、復活のキリストにお出会いしたいと強く願って、祈っていました。

すると、どんな時もキリストが私を見つめていてくださり、人生の山坂を乗り越えさせてくださった、そのことが思い返されて、泣けてなりませんでした。私にはこのキリストしかない、そう再認識させられたら、一緒に生活している若い人たちを見つめておられる、キリストの眼差(まなざ)しを覚えたのです。

するとある日、彼女たちが飾らない言葉で、「人を思いやる心を与えてください。私を変えてください」と涙を流して祈る姿に、私はハッとさせられました。彼女たちの純情な祈りを、キリストは喜んでおられる。

私は、幕屋の信仰と出合って50年以上がたちます。今の私は彼女たちのように、素直に純情に、キリストに向かって祈っているだろうか。私の祈りは言葉だけになっていないだろうか。そのようなことを思ったら、自分が恥ずかしくなってきたんですね。

彼女たちと同じくらいの年のころ、私はこの信仰を知りました。仲が良かった友人が自ら命を絶ってしまったことで、人生の矛盾に悩み苦しんでいた時に、母が幕屋の集会に連れていってくれたのです。

その時、心の痛みをキリストに訴えて祈りました。すると、バーンと倒されるくらいの強い力がやって来るのを感じました。私はそれがキリストだとわかり、心がすっかり晴れて、喜びがあふれてきました。家に帰ってからも、「キリストの神様」と口にしただけで、うれしくてもったいなくて、涙が止まらない。

この体験は私の信仰を揺るぎないものとし、私はその後の人生を歩んでくることができました。

でも、若い人たちがありのままの自分を神様の前に打ち明ける祈りを聞いて、私は信仰の姿勢を正されました。それは、大切なことに気づかせてくれました。かつて私がキリストにお出会いして、毎日を感激して過ごした日々。あの時の信仰に立ち帰るために、このたびの留学があったのですね。

日本に帰国してからは、知り合いの若い人たちを訪ねています。若者たちの現状はどうであれ、キリストがこれからの人生に花を咲かせてくださる。そう信じて一緒に祈ることが、私の使命だとわかったからです。


プロフィール
埼玉県在住。71歳。
趣味は、20年以上前に始めたベランダ菜園。いつも花や野菜に囲まれて暮らす。
時には、洗濯物を干すためのスペースがなくなってしまうことも。


本記事は、月刊誌『生命の光』841号 “Light of Life” に掲載されています。