信仰の証し「ワクワクする永遠の旅へ」

超高齢化の進む日本では、近年「終活」という言葉をよく耳にするようになりました。一般に終活とは、生前から葬儀や墓の準備、身辺整理などを通して最後を迎える心の準備をすることです。しかし今回は、来世へ向けての魂の準備という観点から、長年、幕屋の信仰で生きてこられた前田鶴枝さんに、人生の最後を迎えるお心を語っていただきました。(編集部)

前田鶴枝さん
1928年生まれ。1968年に、人生の大きなつまずきから救いを求めていた時、原始福音の信仰に導かれ、現在に至る。東京都多摩市在住。

力を与えてくださるお方

私は今年で92歳になりまして、ずいぶん体力が弱ってきたのを感じます。牛乳瓶のフタを開けるのも、前は何でもなかったのに、今はエイッ! と、全身に力を込めないと開けられないんです。

そんな、骨と皮しかないような私ですのに、毎週、電車で1時間かけて行く日曜の集会では、「前田さん、お元気ですね」とよく言われるんです。

これは何だろうかと思います。普段は、何か一働きすると疲れてベッドで横になるんですが、何かやるべきことがあるときは、エネルギーを与えてくださるお方がおられて、それで動けてしまうんですね。これは不思議なことだなと感じています。

ありがたいことに、普段は独りで団地に住む私の所に、近所の幕屋の方々が毎日のようにやって来て、いろいろ助けてくださっています。そして、共に祈る時を与えられていることが嬉しいですね。

こうして、体はだんだん動かなくなってきているんですけれど、たとえ肉体が寝たきりになっても、霊は寝たきりにならないということを今、経験しています。どうも霊は年を取らないみたいですね。

白い衣を求めて

この最近、祈っていて思わされることがあります。それは、死ぬということは、肉体がなくなることを通して、自分が霊的に変貌(へんぼう)するんじゃないかということです。肉体がなくなることは1つの変態点で、その1点を通って、それまで生きてきた人生で知ったものとは違う世界を体験することだ、と。

変わるって嬉しいことですよね。ですから死が楽しみなんです。これは頭でわかるんじゃなくて、実感として、しみじみ感じているんです。

人間が人として全うしていくために、肉体の死よりもはるか向こうにあって、死んでもなおその先、神様がおいでになる所に行くまでには、まだ大変な道のりがある。だけど、それはすごく嬉しいことだと思わされています。

私は旅が大好きですが、これは永遠の旅ですね。まだ見たこともなく、経験したこともないことですけれど、聖書を読んでいると、まだ見ぬ世界が慕わしくて、心がワクワクするんです。

「ヨハネの黙示録」には、神様のおられる所に、白い衣を着た多くの聖徒たちがいることが記されています。「彼らは大きな患難をとおってきた人たちである」(7章14節)とありますけれど、私も白い衣を求め、それを着なければ、そこには行けないんだろうなと思っています。

そこへ行くためには、今の信仰の程度じゃだめだなって。この世を1日1日、精いっぱい生きていかなければならない、と。死ぬことは生きることだと、そんな思いに迫られています。

楽しみは神様と語る時

身辺整理では、最近、昔から書きつづけている集会ノートや日記の整理をしています。若い時のノートを読むと、「死」は自分にとって遠くおぼろげなものでした。でも、まだ40代だった娘が天に召された時はショックで、それ以来、折にふれ死とは何かを考えたり、神様にお聞きしたりしてきました。

若いころのノートは、それなりに若々しく、希望にも、また挫折にも満ちていますが、それはやがて老年になり、肉体の死という一つの終活に向かっての、大切な一歩一歩であったと思います。

自分の心の中からも、天に帰るのに必要でないものは捨てていこうと思います。若い時と今とでは、感じ方も変えられてきたんだなと思いますね。

最近は、夜寝る時と、朝目が覚めた時が、とても楽しみなんです。寝る時はベッドに入って、「天のお父様、今日はああでした、こうでした。天のお父様、私はどうしたらいいですか……」って、お祈りじゃなくて、ブツブツ言っているんです。そして、「神様、夢の中で天使に会わせてください」と言って寝ます。すると実際に、天使に会う夢を見る時があります。

また、朝は目覚めてベッドで横になったまま、祈るというより、神様と語りつつ過ごしています。すると、天からはっきりと具体的に示されることがよくあるんです。たとえば、「ヨハネ福音書を読んで祈れ」と、声ならぬ声が響くので、そのとおりに実行しています。

嬉しいのは、常に目指すべきことを与えられているので、停滞することがないんです。これが原始福音の信仰ですね。

そして、これからの未来を担ってくれる若い世代の人々や愛らしい子供たちが、世にあっても、キリストと共に常に勝利して、星のように輝きつづけていってほしい、それが私の希望であり、祈りです。


本記事は、月刊誌『生命の光』2020年3月号 “Light of Life” に掲載されています。