若いひとの声「私、生きてる~ ー持病が再発した不安が喜びにー」

光永照世(28)
神様どうしてですか? 今までこんなに元気に過ごしてきて、すっかり病気から解放されたと思っていたのに。また、あのつらい治療をしないといけないなんて……。
病気の再発

私には、自己免疫性肝炎という持病があります。長期にわたって治療してきましたが、3年前を境に落ち着き、最近は病気も忘れて看護の仕事に、趣味にと、充実した日々を過ごしていました。
それが昨年夏に突然、再発し、入院することになってしまいました。新しい職場にも慣れ、これからの生活に希望いっぱいの日々を送っていた矢先でしたので、ほんとうにショックでした。入院までの数日間は、枕が涙でびしょ濡れになるほど泣きました。
入院後、大量のステロイドを服用する治療が始まりました。最初は比較的元気で、ドラマや映画を観たり、編み物や読書、運動不足にならないように階段をダッシュしたりしていたんです。毎晩、聖書を読んで「神様、どうかこの病気を乗り越えさせてください」と祈りました。
でも、10日を過ぎるころから副作用が出はじめました。神経が高ぶって、自分自身をコントロールできなくなり、睡眠薬を飲んでも眠れず、ご飯も食べられなくなってしまいました。
なんで私はこんな病気になってしまったのだろうか。このまま消えてしまいたい……。
ある日、私は部屋の物音や人の声にも過敏になってしまい、もう部屋にじっとしていることができず、病棟のロビーに飛び出しました。気を紛らわすために賛美歌を聴きながらひたすら編み物をしていましたが、不安やつらい気持ちがうわーっと襲ってきて、ボロボロ泣きながら、かぎ針だけを動かしていました。
すると、前に読んだことがある聖書の一つの言葉が、心に響いてきました。急いで病室に戻り、この言葉はどこに書いてあるんだろうと、聖書を開いてみました。
主にあがなわれた者は帰ってきて、その頭に、とこしえの喜びをいただき、歌うたいつつ、シオンに来る。彼らは楽しみと喜びとを得、悲しみと嘆きとは逃げ去る。
イザヤ書35章10節
「神様、こんなに苦しいのに、楽しみと喜びって……。私には、わかりません! 神様……」
祈りなのか、つぶやきなのか。
どれくらい時がたったのでしょうか。静かな声が私の心に響いてきました。
「わたしがおまえを祝福する。絶対に捨てたりしない」

もっと涙が止まらなくなり、消灯後のベッドの上で嗚咽(おえつ)を必死に抑えながら泣きました。それまでの悲しい涙ではありません。日だまりのような温かさが包み込んでくる感じがしました。
今はつらい状況だけれど、神様は必ず祝福に変えてくださるんだ! と確信がわいてきて、「神様、ありがとうございます。ありがとうございます」と感謝の涙に変わっていました。
それからしばらくして退院しましたが、半年近く療養生活を送りました。副作用との闘いは続いて、ベッドから起き上がれない日もありました。でも、「おまえを祝福する」という静かな声が少しずつ強くなって、気持ちを前に向かせ、治療を頑張ろうと思えました。
神様がおられて

肝臓の数値も落ち着いて、少しずつ日常の生活が戻ってきました。まだ短時間ですが、脳性麻痺(まひ)等の重度の障害をもつ方々のリハビリ・デイサービスで、看護師として働きはじめました。
呼吸状態の観察や吸引、誤嚥(ごえん)に注意しながら1時間近くの食事介助など、気を抜けない場面もありますが、以前働いていた時と違う心の触れ合いに、喜びを感じます。施設内を走りながら、「ああ、私、生きてる~」という実感とうれしさが込み上げてきます。

私の病気は何が原因で再発するのかわからず、これからのことを考えると不安な気持ちはあり、闘いは続いていくかもしれません。でも、私がいちばん苦しい時に響いたイザヤ書の聖句が、今は確信になって力強く語りかけてきます。
私の今の祈りは、病や苦しみの中にある方々にこの喜びを伝えていける、光の存在としてください、ということです。
時々、朝起きるのがつらいことがあります。神様がいないと生きていけないんだなあ、と実感します。でも、この病気を通して知ったのは、どんな中でも祝福してくださる神様がおられて、喜びの世界に生きられることです。
それがうれしいです。
本記事は、月刊誌『生命の光』871号 “Light of Life” に掲載されています。