お母さん、きょうは動物園に行ってたのしかったね、いろんな鳥がいて。クジャクが大きく羽をひろげたとき、ぼく、びっくりした。

 そう、たのしかったわね。それからお池にカワセミがとんできたの、おぼえてる? 羽が青みどりで口ばしがながい鳥。みんながカメラをもって、とんでくるのをまってたでしょ。

 スーッととんできたね。カワセミやクジャクは青やみどりでとってもきれい。でも、カアー、カアーないてるカラスはまっ黒……どうしてかなあ?

 それはね、神さまが人や鳥や花をおつくりになったときに、一つひとつちがう色と形にしてくださったからなの。

* * *

 まだ見たことはないけど、シャコという鳥がいてね。ずっとむかし、シャコは羽が金色で、日があたるとキラキラひかって、それはそれはきれいだったそうよ。

 でもシャコはとてもなまいきで、

 「わたしには、クジャクのように、頭にりっぱなかざりがないじゃないか」

 「わたしは、カワセミのように青くなりたかったのに」なんて、いつもブツブツもんくをいっていました。

 シャコのもんくは、神さまのお耳にもきこえてきました。いつもみんなが幸せでいるように、悲しいことがないように、と思っていらっしゃる神さまは、たいそうお心をいためられました。

 きょうもシャコは、なんだか不満そうなかおをしてブツブツいっています。

 「どうも、この羽の色が気にくわない。金色なんて、ちっとも重みがなくって、わたしらしくないじゃないか! こんな色にする前に、どうして神さまは、わたしの好きな色をきいてくださらなかったんだろう」と、プンプンおこりながら、思いきり石ころをけとばしました。

 そのひょうしにシャコはころんで、そばのゴミために落ちこんでしまいました。そこには、やさいのくさったのや、燃えて灰になったワラくずなどがいっぱいありました。シャコは、とつぜんゴミためにはまってしまって、目をしろくろさせました。

 シャコは、はい上がろうとしますが、もがけば、もがくほど灰やゴミが羽にくっついてしまいます。「な、なんだ、これは! ああ、こまったなあ……、だれかー、だれか、たすけてくれ!」と、さけびました。

 ちょうどそのとき神さまがお通りになって、「シャコよ、どうした? せっかくうつくしい金色にしてやったのに、羽がすっかりよごれてしまったではないか」とおっしゃいました。そして、手をさしのべて、シャコをゴミためから引きあげておやりになりました。

 「まいにち、ピーピーとさえずる鳥のこえをきくと、わたしはうれしい。だがシャコよ、おまえのブツブツいうことばをきいて、わたしは悲しい」と、おっしゃり、神さまはむこうのほうへ行ってしまわれました。

 神さまのおたすけで、シャコはやっとのことで外に出ました。そして、このみっともないようすを、だれかが見ていないかなと、あたりをキョキョロ見まわしました。それから、いっしょうけんめい灰をおとそうとしました。でも灰は、いっそうベタベタ羽にくっついてとれません。

 そのとき、空をとんでいる鳥たちの歌ごえがきこえてきました。

聖なるかな 聖なるかな
つくりぬしなる神さま
小さいものをも愛し
色うつくしくかざり
おめぐみくださる

 その清らかな歌ごえは、シャコの心にジーンとしみいりました。シャコは、はじめてはずかしく思いました。ああ、神さまは、こんなわたしをもおつくりになって、日があたってキラキラひかる金色にしてくださったのに……。

 まいにち日がのぼり、みんなが幸せにくらせるのは神さまのおかげなのに……。わたしは自分のことしか、かんがえていなかった。ああ、なんて恩しらずだったんだろう……。

 「神さま、ごめんなさい」と、シャコは大空を見あげていいました。と、そのとき心のなかがポッと明るく、あたたかくなりました。そしてシャコの目からポロポロッと涙がこぼれました。

 シャコの心がかわったことを、神さまはとてもうれしくお思いになりました。でも、このことをシャコが忘れてしまわないように、羽は金色にもどされませんでした。

 だからシャコは、赤い色に灰のまじったとび色で、まだらがたくさんついているんですって。でも今では、この色もなかなかいいなあと、シャコは思うようになっているそうよ。いつか、どこかで、シャコを見てみたいわね。

* * *

 シャコはもう泣いてないよね? お母さん。ゴミための中でこまってたときは、ちょっとかわいそうだったね。ああ、ぼくはいつも「神さま、ありがとう」っていうことをわすれないようにしよう。神さまにお祈りしたら、神さまはきっと、ぼくの心のなかにきてくださるんだものね。

文・菊池寛著『なまいきなシャコ』より翻案(石井直子)
絵・井上清子