ぼくなんて、いなくったって いいんだ。
だって、おかあさんは 新しく生まれた妹 ばっかり見てる。
きっと、ぼくのことなんて もうきらいなんだ。

ほら、ぼくがカーテンのうしろにいて、
悲しくて泣いちゃいそうなのに、
ちっとも気がついてくれない……。

ZZZ……、ZZZ……。

おや、ぼうやは、
カーテンのうしろで ねむってしまっていたのね。
フフッ、なんてかわいいんでしょう。

妹が生まれたので、ちょうど思い出していたのよ。

ぼうやが神さまのところから
おかあさんのところに来てくれた、
ポカポカ陽気の あの美しい日のことを。

はじめての子供だったから、
おとうさんも おかあさんも
とってもとっても、うれしかった。

それにね、
お日さまも お空も 雲も 風も
お山も 川も 海も 島も
みんな ニコニコしていたわ。

ぼうやが この世界に来てくれて
うれしいよって、よろこんでいたのね。

おじいちゃんも おばあちゃんも、
おおよろこびだったのよ。

きっと、
ひいおじいちゃんも ひいおばあちゃんも、

ひいひいおじいちゃんも ひいひいおばあちゃんも、

ひいひいひいおじいちゃんも ひいひいひいおばあちゃんも、

ひいひいひいひいおじいちゃんも ひいひいひいひいおばあちゃんも……、
みんな とってもよろこんだに、ちがいないわ。

そして、これからぼうやが 大きくなっていくときに、
ようち園や 学校で出会う お友だちにとっても、
お仕事や 住む町で 知り合うでしょう たくさんの人たちにも、
赤い糸でむすばれていて いつかおよめさんになる人にも、

今はまだ神さまのところにいて
やがてこの世界にやって来る ぼうやの子供にも、
まごも、ひまごも、ひひまごも、
ひひひまごも、ひひひひまごにも……、
ぼうやがいなきゃ、だめなの。

そう、絶対にぼうやじゃなきゃ、だめなのよ。
おかあさんにも、ぼうやが絶対、必要なの。

だから今、こうやって、大、大、大好きなぼうやを
だきしめるのよ。

「あなたが生まれた日、それは神様が、この世界はあなたなしでは存在できない、とお決めになった日なのです」(ユダヤの言葉より)

文・大矢 もんど
絵・ほり はつき