【第12連】  
我らは口ぐせにも言うまい、
「この肉を顧みずに 今日まで私は競い、
精進し、概して進歩した」と。
鳥が羽ばたき歌う如くに、我らは叫ぼう、
「すべて善きものは 我らのものだ。
霊が肉を助けるように 今や肉も
霊を助けるのだ!」と。
Let us not always say
“Spite of this flesh to-day
“I strove, made head, gained ground upon the whole!”
As the bird wings and sings,
Let us cry “All good things
“Are ours, nor soul helps flesh more, now,
than flesh helps soul!”

 この連の前半の意味は、「私は、今日まで肉を顧みず、無視して、努力し、前進し、全体から見て、だいたいにおいて進歩した。こんなことを口癖にも言うまい」です。

 肉というのは、内面的な深い心を欠く、動物的な要素、動物的な人間生活を指しています。

 「それを無視した、そんなものは顧みずに過ごした」などとは言ってはならない。

 肉は霊魂の器ですから、器がよくなければ、やっぱり霊魂も働きません。肉を無視し、肉をかわいがらない場合には、霊肉両全の完成というものはありません。しかし、ただ肉体だけを鍛える運動選手みたいになったなら、つまらないですね。また、精神、精神と言って頭でっかちになったり、なんだか仙人みたいになっても、おかしな人間です。

 私たちはとかく宗教でも志すと、精神的、霊的なことを強調しがちです。そして、霊や魂を引き下げるのが、肉なるもの、動物的なものであるかのように思います。

 ところが、このように霊、肉というものを対立的には考えない、霊肉一如で霊と肉の調和がとれた人生を送るということが、ベン・エズラの思想というか、ヘブライズムなのです。ヘブライズムとは、聖書の信仰に立脚した思想、生活態度を指します。

(1972年)