来たる者との出会い

 「クォ ヴァディス ドミネ(どこに行かれるのですか、主よ)」という有名な話があります。

 ローマの郊外にアッピア街道という、イタリア半島東岸の港に通ずる道が古くからあります。紀元1世紀、皇帝ネロの時代にクリスチャンに対する非常な迫害がありました。使徒ペテロは周囲に勧められ、信者を残してローマの都を逃げ出しました。すると、ローマを出てアッピア街道にさしかかった時、向こうから白い衣を着た人がやって来た。それは復活のキリストであった。

 ペテロは驚いて跪(ひざまず)き、「主よ、どこにお出でですか?」と尋ねた。これが「クォ ヴァディス ドミネ」というラテン語で、小説の主題にもなっております。

 また、イエス・キリストがペテロに現れたという伝説が伝わっているため、そのアッピア街道付近には同名の教会が建てられております。

 ゴルゴタの丘で十字架にかけられて死んでしまったイエス。しかし、復活してガリラヤのほとりやエマオの村やエルサレムで、たびたび弟子たちに姿を現された。復活のキリスト、死んだはずのイエスが、光り輝く姿でフッと現れてこられるという、信じがたい現実をペテロは体験しました。その後、天に昇ってゆかれたキリストが、再びペテロに現れた。

 ペテロが問うと、「おまえが、殺されることを前にしておる信者たちを見捨てて逃げてゆくから、わたしが代わってローマへ行き、再び十字架にかかろう」と言われた。

 生けるキリストに出会ったペテロは信仰が復興され、ローマに引き返した。そして、ローマ人によって十字架にかけられようとしていたが、「いいえ、私のような罪深い、神に背いた人間は、主と同じ姿ではとても十字架にかかれません」と言って、逆さ十字架につけられて死んでいったといいます。このような不思議な力は、どこから湧くのでしょうか。

(1973年)

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