田中 初穂

 「今日、お父さんが末期がんと診断された。余命は、あとわずかだって……」

 夜、仕事を終えて部屋に帰ると、携帯電話に妹から連絡が来ていました。それは、神様に仕えて生きる歩みをしたいという私の願いが聞かれて、キリスト聖書塾に入れていただいた最初の日のことでした。

 突然の知らせに、「もうお父さんとは一緒に祈れないのかな」と思うと、涙が止まりませんでした。

 その1カ月後の、年の瀬も迫ったある日、今度は父が危篤だと連絡が入りました。夜中なのに聖書塾の方が私を車に乗せて、東京から2時間ほど離れたつくば市の病院に向かってくださいました。

 病室でベッドに横たわり、苦しそうに息をしている父のそばにしゃがみ、手を握ると、涙がポロポロと流れてきました。そんな私の姿を見た父は、私の頭に手を置いて、「俺は大丈夫だから、聖書塾に帰りなさい」 と言ったのです。

(2017年 東京都在住)