田中 初穂

 私の母は認知症を患い、施設に入って5年になります。10年ほど前から兆候がありましたが、私は夫の仕事の関係で遠方にいるので思うように看てあげられず、葛藤がありました。

 両親は、結婚当初に原始福音の信仰に出合いました。2人とも結核を患い、いつ死ぬかわからないような中からキリストに救われました。病弱でしたが、喜んで伝道に身を捧げ、信仰一筋で生きてきました。

 父は私が8歳の時に亡くなりましたので、母が独りで私たち3人の子供を育ててくれました。

 貧しい暮らしの中、体の弱かった母にとって神様との交わりが、何よりも深い慰めとなっていたのだと思います。どんなに忙しい時でも、毎朝5時になると、台所から母の祈りの声が聞こえてきていました。また、私たちが聖日集会を休みたいと言うと、どんな理由があっても厳しく叱られました。

 そんな母を昨年(2016年)の春、ようやく訪ねることができました。久しぶりに会う母は目もうつろで、娘の私を見てもポカンとして、わかってくれません。記憶も失い、昔の面影も消えていく姿を見ながら、最初はショックで、寂しさを隠しきれませんでした。

(2017年 名古屋市在住)