河盛 尚哉

 私が若いころから愛誦してきた詩があります。それは高校生のとき、学校の図書室でふと手にした『人生の秋に』という本のなかにありました。

 凛として力強く、やさしく心にしみいる言葉の数々。しかもこの詩が、ヘルマン・ホイヴェルスというドイツ人神父の手になるものと知って、おどろきました。

 ホイヴェルス神父は、1890年(明治23年)ドイツに生まれ、大学で日本語をまなび、日本行きを志願し、1923年に宣教師として来日しました。以来54年、上智大学で教壇にたち、後に学長となり、戦後は東京麹町(こうじまち)教会での伝道にたずさわりました。

 その愛情ゆたかな伝道は、多くの人々に感化をおよぼしたといいます。

 そして昭和15年に、つぎの詩を発表しています。

 日いづる国
朝日のあいさつが
世界で いち早くとどく国、
しののめの海を開いて
身をもたげる
日いづる国よ!

 君と民
かしこみてただもだし
民、うやまいて君を仰ぐ、
心に味わうは
君が御前に
君しろしめす幸

 勇ましい心
なべて うるわしいものは
よろこびで心を満たす、
わけても大いなるは
男のいさおし
女のかえりみなき愛

 働くよろこび
民びとたちは
いかに秩序のために燃えて
はつらつと働くことか!
胸の使命を信頼して
たのしく時代とともに進む

 日本の女たち
心やさしくして慎み深く
花のようにしずしずと歩む
乙女たちはその通りです
だが 心のうちには炎々と
愛国の火がもえる!

 使命の解釈
遠く世界のはてに2600年
静かにおのれに満足して
お前は深く根をおろした
さあ、今度は花を咲かせ
実をみのらせるのだ!

(「2600年の元日」より抜粋)

 紀元2600年の元日につくられたこの詩には日本人へのやさしい眼差(まなざ)しと敬愛の心がみちています。

 それは、彼が生涯にわたって日本人の精神性を追究したからだと思います。

 歴史の舞台にたって、歴史の声なき声をきき、日本の神話や万葉集、古今集をはじめとする古典群に接し、特に明治天皇の御製には深い関心をよせています。

 そして数々の御製や和歌をドイツ語に訳して、その高い精神性を広めようとしています。

 特にご皇室を敬う思いはふかく、国民は皇室を中心にあたたかい家族のように一体となり、2000年以上の永きにわたって歴史をつむいできた。

 これは世界でも類を見ない出来事であると、のべています。

 この高い精神性をもった日本人がみずからの民族の使命に目覚めるならば、どれほど大きな貢献を世界史になすことであろうかと、日本の大いなる祝賀の日に、ホイヴェルスは感動と祝意をこめてこの詩を編んだのでした。

 本詩は、ことしも新年をむかえた日本への、ひとつの心の贈り物なのです。