民族衣装を着て(タージ・マハルにて)

伊藤 純男

 「わーっ! ぶつかるー!」

 タクシーに乗り込み、40分で着くと言われたホテルまで2時間半もかかった。その道すがら私が目にしたのは無秩序な運転、物乞い、物売り、地面に寝かされた裸の赤ん坊、野良犬、野良牛……。

 路上に一つの世界が存在した。まるで子供が思いのままに描いた絵の中のようだ。日本のように整った環境で生きている私にとって、大きな衝撃であった。

 しかし、なぜか私の心は躍った。そこには生きる逞しさと、縛られない自由があった。

 ここは神秘の国・インドだ。

(2016年 東京都在住)