石山 千恵子

「空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる」
(マタイ伝6章26節)

 20年ほど前の私は、うつ状態とパニック障害に苦しんでいました。更年期も影響していたと思います。

 けれども私は、自分に何が起こったのかわかりませんでした。運転中に強い不安感に襲われてパニックになり、道路脇に車を停めて、治まるのを待つしかありません。とうとう運転はできなくなりました。

 できることは、家族の食事を作ることだけ。皆を送り出した後は、一日じゅう、ぼーっと庭を眺めていました。明るさだけが私のとりえだと思っていたのに、これから自分はどうなってしまうのだろうと思うと、暗い淵に吸い込まれそうでした。

 そんなとき主人が、箱いっぱいのりんごを買ってきてくれました。

 「これを木の枝に刺したら、鳥がいっぱい飛んでくるよ」

 主人に言われたとおりに、雪景色の庭の木にりんごを刺すと、甘酸っぱい香りに誘われて、野鳥がいっぱい飛んできました。元気にさえずる小鳥たちを眺めて、なんとか一日を過ごすことができました。

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 ある日、一羽の鳥が木の枝に留まっていました。あまりきれいな鳥ではありません。茶色の羽毛もすすけていました。でもその羽毛がまるまると体を覆っているのです。まるで分厚いコートを着ているようでした。

 見ているうちに、なぜか涙が出てきました。こんな小鳥にも神様は、まるまると羽毛をまとわせて厳しい十勝の冬を乗り越えさせてくださるんだと思うと、私も大丈夫じゃないかしらと思えてきたのです。

 「空の鳥を見てごらん」という言葉が響いてきました。

(2014年 帯広市在住)