廣安 恵子

 父が亡くなったのは、私が高校に入学する前の、春休みの時でした。夜中に誰かが扉をドンドンと叩く音で、目が覚めました。仕事帰りの父が交通事故に遭い、意識不明、とのことでした。

 病院に駆けつけた時、父は体じゅうに包帯を巻かれていました。辛うじて見える顔は腫れ上がっていて、父だと言われるまでわかりませんでした。

 お通夜の翌朝、ハッと目が覚めた私は、すぐに父を捜しました。すべてが夢であってほしい、と思ったのです。座敷へ行くと、母が父の棺の前で泣いていました。そのようすを見ても、私には現実を受け止めることができませんでした。

 事故は、未成年者の飲酒運転によるもので、引き逃げでした。自転車に乗っていた父は、80メートルほど引きずられたそうです。

(2017年 福山市在住)