長井 充
(藤井 資啓記)

 「長井さんの弾くベートーヴェンの『月光』は、ドラマチックな演奏ではありませんが、何だか涙がでました」

 「天才と呼ばれる人やコンクールで優勝した人の演奏より強く、心地よく心に響いてくる。技巧やアレンジで逃げない、『芯』と『自然体』を感じた」

 「長井さんの演奏は何だか、すごく澄み切った音色に聞こえます。なぜなんでしょう?」

ステージでキリストを証しする長井さん

 これらは、長井さんの演奏を聴いた人たちがインターネット上に書き込んだ、数多くの感想の一部です。

 長井さんの年齢は80歳。今も毎日5~6時間はピアノに向かっておられます。それは多くのピアニストが弾くようなグランドピアノではなく、電子ピアノでの練習です。長井さんは世の音楽家とは、おおよそ違う生き方をしてこられました。

 「ぼくのことを『ピアノをもたないピアニスト』と呼ぶ人がいるんですよ。ぼくが住んでいるのは古い木造アパートでね。そんな所にグランドピアノなんか入れたら、家がひっくりかえってしまうでしょ。でもぼくは、電子ピアノを一度弾きつぶしてしまうくらい練習してますよ。人は、環境が整わなければ良い演奏はできないと言うけれど、ぼくの場合は逆ですね。環境が悪ければ悪いほど、すばらしいものが内側から出てくるんですよ」

と、笑顔で話してくださいました。

(2015年 東京都在住)