原始福音
キリストの幕屋

童話

わたるの鯉のぼり

 

 去年の今ごろ、わたるくんのお父さんは、鯉のぼりをあげながら、大きな声で歌っていました。
「元気よく泳いでおくれよ。今日、病院からわたるが退院してくるんだ」
 わたるくんが帰ってきたのは、その日の午後のことです。お父さんにおんぶされた、やせっぽりのわたるくんは、うれしそうに言いました。
「わあ、鯉のぼりー。
 あのちっちゃいのは、ぼくみたいだね」
 でも、わたるくんはそれからも具合が悪くて、部屋から出られませんでした。
 5月5日が過ぎて、鯉のぼりをたたみながらお母さんがため息をつきました。すると、急におとうさんがこう言いました。
「この鯉のぼりを、わたるが元気になるまで出しておこう」
 ちょっと変だけど、鯉のぼりはまた窓の外で泳ぐことになりました。
「わたるが元気に学校に行けるようになるまで、見守ってくれよ。
 頼むよ、ちびくん」
 それを聞いた青いちび鯉、アオは張り切った。夏、秋、そして寒い冬も、一生懸命泳ぎました。もう一度春が来て、ツッピィが帰ってきたときには、すっかり色あせていたというわけです

 

 

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