原始福音
キリストの幕屋

絵物語

ワイルクの鐘
ダミエン神父のお話(1)

 
 
 女の子が、両親に手をひかれて来ました。
「必ず会いに行くからね」
 お父さんが、きつく抱きしめて言いました。水色のムームーが風になびいています。ヘレナでした。ヘレナはうつむいたまま、小さくうなずきました。
「これがお母さんだと思ってね」
 お母さんは布でできた人形を渡しました。
 ヘレナは、何回も振り向きながら、係の人につれていかれました。
 船は港を離れて、出て行きました。
 ヘレナは甲板に立って、いつまでも手をふっていました。やがて、港は見えなくなっていきました。ヘレナは、そのまましゃがんで、泣き出してしまいました。
「かわいい人形ですね」
 見上げると、どこかで見覚えのある神父さんが立っています。
「お父さんやお母さんと離れてさびしいね。でも、天のお父様は、いつもあなたといっしょにおられます。
 そして、私もずっといっしょだよ」
 ダミエンは、ヘレナを優しくなでました。
 モロカイ島が近づいてきました。大きな大きな壁のような岩山が見えます。
 波が、はげしく船を揺さぶりはじめました。
「あれだ、あそこがカラウパパだ」
 ダミエンは心臓がドキドキ鳴って、なぜか体じゅうに力がわいてきました。
「みんなが待っている。あそこが私の生きる場所、そして死ぬ場所なんだ」
 ダミエンはじっと前を見つめていました。
 

 ダミエンは、その後16年間、モロカイ島で過ごしました。最後は、自分自身もレプラにかかって、亡くなっていきました。
 モロカイ島での二人の様子は、次の号で話しましょう。

(つづく) 

文・まちやまみねこ  
 絵・ば ば のりこ  

 


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