原始福音
キリストの幕屋

絵物語

ワイルクの鐘
ダミエン神父のお話(1)

 
 

 お祝いの式の間、ダミエンが前の方から見ていると、大人たちの中に、水色のムームーを着た小さな女の子が座っています。ヘレナです。
 ヘレナは小さな手を合わせて、一生懸命に祈っていました。ダミエンは、スカーフに隠れた、できものを見つけました。
「あの子もレプラ……」
 彼の胸がぎゅっとしめつけられました。
 式が終わり、人々は帰っていきました。ヘレナもうれしそうに家に戻っていきました。

 さて、教会に残ったのはダミエンたちだけです。ハワイ諸島のカソリックの責任者、メグレ司教が話しだしました。
「みなさんも知っていることでしょうが、今のモロカイ島はひどい状態です。人々が希望をなくして、苦しんでいます」
 たしかに、ひどい状態でした。
 レプラ患者たちは、モロカイ島の北に突き出した、カラウパパ半島に送られていました。
 前には、鮫のたくさんいる海が広がり、ドーン、ドーンと波しぶきをあげています。後ろには切り立った絶壁。どこにも逃げられません。
 医者もいませんから、治療もできません。草や木で作ったそまつな家ばかりで、雨が降るとずぶぬれになってしまいます。
 病気はますます悪くなって、たいていの人は2、3カ月で死んでしまいました。どうせ死ぬんだからと、お酒ばかり飲んだり、泥棒や乱暴も平気になったり、まるで地獄のようでした。

 

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