原始福音
キリストの幕屋

絵物語

ワイルクの鐘
ダミエン神父のお話(1)

 
 
 真っ白なプルメリアの花が咲いています。さとうきび畑が、サヤサヤと歌っています。
 ここはハワイ諸島のひとつ、マウイ島のワイルクです。
 今から百年以上前のこと、ヘレナという女の子が住んでいました。お父さんとお母さんは、さとうきび畑で働いています。
 ヘレナは最近、背中や腕のできものを気にしていました。
 お母さんがそのことに気づいたのは、だいぶ日がたってからでした。お医者さんにみてもらうと、すぐにレプラ(ハンセン病)という病気だとわかりました。
 レプラは、そのころハワイじゅうで流行していました。できものができて、そのうち顔や手足が崩れてゆきます。当時は、死んでしまう人がたくさんいる、恐ろしい病気でした。
 ハワイ政府は患者たちをモロカイ島に送ることにしていました。ヘレナも、近いうちにモロカイ島に連れていかれることになりました。
 ヘレナの部屋からは、もうすぐできあがる教会が見えていました。
 「ねえ、お母さん、私あそこでお祈りしようと思うの。
 あんなに空が近いんだから、お祈りが天国に届くでしょ?
 私の病気も良くなるよね」
 お母さんは、何も言わずにほほえみました。
 カラーン、カラーン。
 朝のワイルクの町に、教会の鐘がなりひびきました。
「ヘレナ、今日は新しい教会に、これを着ていきなさい」
 お母さんは、きれいな水色のムームーを見せて言いました。前の晩から縫っていたのです。
「わあ、ありがとう!」
 ヘレナはさっそくムームーを着て、家を飛び出しました。そして教会への道を走っていきました。
 
1ページ2ページ3ページ4ページ5ページ