原始福音
キリストの幕屋

絵物語

ヘレナからの手紙
ダミエン神父のお話(2)

 
 

 「ダミエン先生、おはようございます!」
 ヘレナが、教会の屋根を見上げて言いました。小さかったヘレナも、もうりっぱな大人です。ダミエンはあいかわらず大工仕事。
「やあ、ヘレナ。元気かい」
 そのとき、ダミエンの手から金づちがはずれて、ヘレナの前に落ちました。ダミエンはゆっくりと降りてきました。
「すまないね。ありがとう」
 差し出したダミエンの手を見て、ヘレナはびっくりしました。赤くはれあがり、指がくずれかかっていました。ダミエンは、それほど悪くなっていたのでした。
 それから一カ月後、ダミエンはとうとう寝たきりになりました。
「ダミエン先生、ヘレナです」
「ああ、来てくれたのかい」
「はい。オレンジを持ってきましたよ。
 ずっと前、先生とジョーおじさんと一緒に植えた木に、たくさんなっていたんです」
 ベッドに寝ているダミエンは、やさしい目で、ヘレナを見ました。そして、思い出すように言いました。
「あのころは、まだ小さな女の子だったね」
 ヘレナも思い出していました。マウイ島から船に乗せられて来た日のことを。
 お父さんやお母さんと別れて、かなしくて泣いていたとき、
「天のお父様が一緒にいてくださるよ」と声をかけてくれたのが、ダミエンでした。
「どうだい? あのとき私が言ったとおりだったろう」
「はい」
「これからも、だよ」
 ヘレナは返事をしようと思いましたが、声が出ません。そのかわり涙がボロボロ出てきました。
 次の日、ダミエン神父は天に召されました。

*     *
 

 

 

 大好きなダミエン先生、
 先生が天国に行かれてから、ずいぶんたちましたね。今は、泣いているひまがないくらい、いそがしくしています。
 初めは先生が一人でやっていたことを、今はみんなでやっています。私も、子供たちの寮で、女の子たちの世話を始めました。
 先生のやりかけていた、教会の工事は終わりました。広くなった教会で、みんな喜んで祈りつづけています。床の穴は、そのままに残っています。いつか、私もそれを使う時がくるかもしれません。でも、だいじょうぶです。天のお父様がいっしょにいてくださいますから。

ヘレナより

(おわり) 

文・まちやまみねこ  
 絵・ば ば のりこ  

 


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おわり