「ダミエン先生、おはようございます!」
ヘレナが、教会の屋根を見上げて言いました。小さかったヘレナも、もうりっぱな大人です。ダミエンはあいかわらず大工仕事。
「やあ、ヘレナ。元気かい」
そのとき、ダミエンの手から金づちがはずれて、ヘレナの前に落ちました。ダミエンはゆっくりと降りてきました。
「すまないね。ありがとう」
差し出したダミエンの手を見て、ヘレナはびっくりしました。赤くはれあがり、指がくずれかかっていました。ダミエンは、それほど悪くなっていたのでした。
それから一カ月後、ダミエンはとうとう寝たきりになりました。
「ダミエン先生、ヘレナです」
「ああ、来てくれたのかい」
「はい。オレンジを持ってきましたよ。
ずっと前、先生とジョーおじさんと一緒に植えた木に、たくさんなっていたんです」
ベッドに寝ているダミエンは、やさしい目で、ヘレナを見ました。そして、思い出すように言いました。
「あのころは、まだ小さな女の子だったね」
ヘレナも思い出していました。マウイ島から船に乗せられて来た日のことを。
お父さんやお母さんと別れて、かなしくて泣いていたとき、
「天のお父様が一緒にいてくださるよ」と声をかけてくれたのが、ダミエンでした。
「どうだい? あのとき私が言ったとおりだったろう」
「はい」
「これからも、だよ」
ヘレナは返事をしようと思いましたが、声が出ません。そのかわり涙がボロボロ出てきました。
次の日、ダミエン神父は天に召されました。
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