原始福音
キリストの幕屋

童話

ダビデと小さな竪琴

 

 将軍は、われに返ると、馬で丘をかけくだり、少年の前に立ちました。将軍は、少年の澄んだ瞳を見て、はっとしました。
(ふしぎな少年だ。この子には神さまが共にいらっしゃる)
と独り言をいいました。
「おまえがダビデだね。
 じつは、王が重い心の病気になられたのだ。
 それで宮殿に来て、その竪琴を弾いてくれないか。その美しい琴の音色で、王の心をなぐさめてほしいのだ」
「えっ、サウル王さまが病気に、ですか?
 でもぼくは、ただの羊飼い。宮殿の音楽家ではありませんし、この羊たちの番をしなければ、父に叱られます」
と、ダビデは答えました。
 そこで、将軍がダビデの父に会って許しをもらってから、ダビデは王さまの町ギベアへ行くことになりました。

 

ダビデと小さな竪琴 挿絵2

  翌日、ダビデは,ひとり夜明けを待って、ロバで出発しました。胸には、五本の琴糸がはられた小さな竪琴を、しっかりと抱えています。
 ギベアの町は、ベツレヘムから北へ14キロほど行った丘の上にありました。その真ん中に、石を積み重ねて造られた王さまの小さな宮殿がありました。
  宮殿の中庭まで行くと、将軍が迎えてくれました。
「おお、ダビデよ。よく来てくれた。
 王の容体は、ますますひどくなった。だまっていたかと思うと、突然、わけもなく槍を投げつけたりするんだ」
  そう言って、重く閉ざされた扉を指さしました。
 ダビデが部屋へ入っていくと、中は暗くて、今にも消えそうな小さな灯火が、一つあるだけです。
 目がなれてくると、奥の壁にぐったり寄りかかり、足を投げ出して座り込んでいる大きな人影があります。そのうなだれた頭に、金色の 冠が見えてきました。王さまの足もとには槍がころがって、その穂先が光っています。
(王さま!……)
 ダビデは恐ろしさのあまり、その場に立ち止まってしまいました。それから、心臓をドキドキさせながら、大きく息を吸って、勇気をもって近づきました。
 青白い王さまの顔です。苦しそうに額にしわを寄せて、目はかたく閉じられています。

 

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