こうして、ようやく準備ができました。いよいよ、水を入れる日がきました。 「さあ、行くぞ!」 ザアーッと水が流れこみました。誰からともなく、拍手がおこりました。 翌朝、みんなの前に広がる田んぼは、キラキラと水面が光って、まるで湖のようです。 さっそく、用意していた苗を、みんなで植えました。 苗はすくすく育っていきました。
その年の8月、日本は戦争に負け、研究所は閉じられてしまいました。小野瀬さんたちも、村を遠く離れて、日本へ帰る準備を始めました。 「米は実ったかなあ。虫はついていないだろうか」 小野瀬さんは、そのことばかり考えていました。 そんなある日、村長から電話がありました。 「小野瀬さん、稲が実りましたよ。でも、この後どうしたらいいのかわかりません。教えにきてくれませんか」 「そうですか、実りましたか! さっそく参ります!」 戦争が終わった直後で、中国はたいへん混乱していましたから、ひとりで村へ向かうことは危険なことでした。けれども、小野瀬さんの頭には、実った田んぼのことしかありません。村はもうすぐです。
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