原始福音
キリストの幕屋

絵物語

板壁の浄土

 

 さて次の日、目覚めた善恵は、主のいないやしきを出て、もとの庵に帰っていきました。衣の中の宝玉には気づかないようです。
  長継がいないので、やしきにも行けず、また毎日、庵に座りつづけ、たまに物ごいをするくらしでした。
  さて、秋が深まり、多摩川のほとりのかやも、すっかり枯れて、さやさや風になびくころ。しんと寒くなると、食べ物もなかなか手に入らなくなりました。
  あちこち物ごいをするうちに、ぼろきれのような衣は、さらにぼろぼろになっていきました。
「うーむ、冷えるのう」
  ある月の明るい晩、寒さに震えて寝返りを打つと、キラリ! すり切れたそでから、何か光るものが転がり落ちました。
「な、なんだこれは。この輝き、星のようじゃ。都で一度だけ見た百済の宝玉か」
  しばらくながめていましたが、はっと思い当たりました。
「長継か、長継が縫い込んでくれたのか」

板壁の浄土 挿絵3