原始福音
キリストの幕屋

絵物語

板壁の浄土

 

 さて、東の国に豊連長継(とよのむらじ ながつぐ)という役人が、朝廷からつかわされました。長継は、善恵の幼いころからの友だちでしたが、たいへん優秀で高い位についておりました。
「豊連さまはお役人だが、み仏をあつくうやまわれ、たいそう心の広いかただそうだ」
 そんなうわさが、狛江の里にも広まり、善恵の耳に届きました。
「ああ、長継ではないか。あやつは家柄は高くはないが、まじめな男だった。よく出世したのう。会って話がしたいものだ」
 善恵はさっそく、何里か離れた長継のやしきを訪ねてみました。ところが門の前で、
「こら、このこじき坊主、何しに来た」
と、どなられました。こじきのような善恵は、門の中には入れてもらえません。すごすごと引きかえそうとしたその時、頭の上のほうから懐かしい声がしました。
「もしや、そなたは……善恵ではないか」
 たまたま馬で帰ってきた長継でした。
「そ、そうじゃ、長継」
 親友の長継は、どんなにみすぼらしい姿でも、善恵だとわかったのでした。
「そなたが都を追い出されたことは、わしも聞いていた。何か深いわけでも……、まあよい。とにかく中に入れ。体を清め、何か食べよ」
と言って、やしきの中に通したのでした。
 つもる話をしたかった長継でしたが、善恵ときたら部屋に上げられたら、体を清めもせず、食べ物を頼むしまつ。