夏休みがやってきました。ふゆくんの押し車の中には、石はもう一つも入っていません。ふゆくんは少しずつ、押し車なしで歩く練習を始めました。
「いちに、いちに」
近くの公園から、元気な声が聞こえます。ふゆくんは一生けんめい歩く練習です。お父さん、お母さん、お姉ちゃんが、かわりばんこに手伝ってくれます。
ふゆくんの影ぼうしが、ながーくなるまで、練習の声はひびいていました。公園の片隅には、押し車の影も、ながーくなっていました。
ある日、お母さんが言いました。 「さあ、明日はバスに乗って遠くの公園に行こうね」
ふゆくんは少し不安そう。お母さんの顔をのぞきこみながら聞きました。
「車は持っていけないね」
ふゆくんにとっては、初めての大冒険でした。ドキドキして、その夜はあまりよく眠れませんでした。
次の朝、ふゆくんはなんとか、バスに乗ることができました。そして、降りることもできました。ふゆくんは、ほっとした顔になっていました。
公園の中には、うさぎ、やぎなどの動物がいっぱいいました。木の幹には大好きなせみがとまっています。夢中でせみを探しているふゆくんは、知らないうちにずいぶん歩いていました。お母さんは言いました。
「こんなに歩けたね。もう、押し車がなくても、だいじょうぶだね」
「うん。ボク早く幼稚園に行きたいなあ」
二人の顔はうれしさでいっぱいです。
夏のおひさまも、きらきらと輝いてみえました。